キング・クリムゾン『クリムゾン・キングの宮殿』50周年記念エディションを聴く

キング・クリムゾンクリムゾン・キングの宮殿』が発表されたのが1969年。それからなが~い年月を重ねて、去年でなんと50年! それを記念して発売された本作品だが、音源はどれも似たり寄ったりで、食指を動かされる理由は実はさほどない。それでもこれを購入しようと思ったのには、もちろんいくつかの理由があるが、最大の理由がこれ。かつてCD化された際に使われたマスターテープは実は第二世代、つまりコピーであり、オリジナルのそれは長らく行方不明であったのだが、そのオリジナル・マルチ・マザーが2003年にレコーディング・スタジオの流しの戸棚から発見され(初めて情報を目にしたのがこの記述だったのだが、2020年1月のレココレの記事では、ヴァージン・レコードの倉庫で発見、となっている)、それを元に新たなマスターが製作され(厳密にはリミックスとなるわけだが)、以降、これがリファレンスとして適用されている。ところがどっこい、この新マスターの音盤を所持していない。それ以前のCDは既に2枚も所有しているんだが、やはり、どうしても聴いてみたい!という欲求には抗えなかったというわけだ。幸いにして、ジョージのBOXを買った時に付加された、期限切れの近い高額のクーポンがあったから、という一文も付け加えておこう(笑)

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一番手前のジャケットは、色調を無視し、Wジャケットをシングルに変更し、更に左下のステッカーの様なものまで直に印刷してしまったという、やりたい放題のトルコ盤の復刻紙ジャケ。(日本盤のみの特典)

 

さて、その内容をざっと紹介しておこう。

Disc-1「2019 ステレオ・ミックス & インストゥルメンタル・ミックス」

Disc-2「オルタネート・アルバム, エクスパンデッド・エディション」

Disc-3「オリジナル・マスター・エディション, エクスパンデッド」

Disc-4  はブルーレイ・オーディオ中心で詳細は後述。

 

Disc-1.は文字通り2019年版リミックス&そのインスト。

Disc-2.はオルタナ音源と、オケからVoだけを抜き出したり、ジャッコ・ジャックスジクのVoに差し替えたりと、あの手この手を駆使して作られた新ミックス音源。

Disc-3.は前述の通り、オリジナル・マルチ・マザーを元に忠実に再現された新マスター(2009年リミックス)と、2枚目と同じくオルタナ音源。

Disc-4.はBD。CD3枚の収録曲全て+2019年版5.1chサラウンド・ミックス+映像クリップ。収録フォーマットはDTS-HD MA 5.1 & LPCM 5.1/DTS-HD MA Stereo & LPCM 24/96。このうち1枚目に収録されたインストの「ムーン・チャイルド」エディット・バージョンは、オリジナルの尺で収録されている。映像クリップは、例の69年ハイドパークの「21世紀の~」。

前述の通り、どうしても聴いてみたかったのはDisc-3の2009年の新マスターであるが、作業はデジタルデータとしてストレートコピーしたのち、オールデジタルで行われているため基本的には劣化しない。それをそのまま大元のLPレコードの音に極力近づけたという印象。音が塊となって押し寄せるかんじは、マスターのコピーを使った初CD化時の音とは一線を画す。

それにしても、である。このアルバムが発売から50年経った今でも、全く色褪せない事に、正直驚きを禁じ得ない。「21世紀の~」は今でも頻繁にCM等で取り上げられるという現状を、当時、一体だれが想像したであろうか?