ウイスキーに合うアルバム No.11 - ボブ・マーリー・アンド・ウェイラーズ 『バビロン・バイ・バス』(1978)

今夏、ボブ・マーリー・アンド・ウェイラーズのアルバム『カヤ』(Bob Marley & The Wailers"Kaya"1978)のデラックス・エディションがリリースされた。個人的に初めて購入した彼らのアルバムだったので、非常に思い入れがあるし、実はCD未入手なので、普通に考えれば即購入である。しかし、アマゾンでポチる寸前で思いとどまってしまった。それには、いくつかの理由があるのだが、一番大きかったのは物理的なもの…即ち、収納スペースの問題である。正直、毎月物凄いペースで増加して行く書籍やCDは、今や(いや、最初から)自分の寝床すら奪いかねない勢いなのだw 発作的な勢いで買ってしまったものは、それだけの衝動が働いたのだから、その一事をもって正当化してしまう事にして(それはそれで問題だがw)、ちょっとでも迷いが生じたものは、一度立ち止まってみようというのが、現在のスタンスである。今回立ち止まってしまった理由のひとつに、ボーナスディスクがあった。これは、当時のライブ音源らしいのだが、レビューを読む限り、音質が劣悪であるとの事。む〜ん、確かに当時のライブ音源は貴重かもしれないが、劣悪な音源に対して、幾らかの金額が上乗せされる状況はちょいと納得が行かないし、それが手を抜かないことで有名な「デラックス・エディション」であれば尚更なのである。散々迷った挙句、今回は見送る事に…、が、しかし、呑んだくれには酔った勢いってのがあってだな、ある日突然郵送されて来た、な〜んて危険は常に孕んでいるわけなんだがw

カヤ<35周年記念 デラックス・エディション>

カヤ<35周年記念 デラックス・エディション>


さて、今回は『バビロン・バイ・バス』("Babylon by Bus"1978)である。すっかり秋めいて来たとは言え、日中のうだる様な暑さが一気に影を潜める気配は無いし、風呂上りのクールダウンには、まだ暫く冷たい麦の飲み物(もちろん、麦茶じゃない方)のお世話にならなきゃいけない。そう、未だに気分はジャマイカなのだ。
"レゲエ"という音楽が、ロックという世界に割って入り、一気にポピュラー化したのは、恐らく当時の有名ミュージシャン達の尽力に拠るところが大きい。一番心酔していたのは言うまでもなくクラプトンだろう。カバー曲「アイ・ショット・ザ・シェリフ」"I Shot the Sheriff"がスマッシュ・ヒットとなり、続くアルバム『安息の地を求めて』(Eric Clapton"There's One in Every Crowd"1975)では、レゲエによって換骨奪胎したブルース・アルバムを作り上げた。しかしこのアルバム、セールス的には振るわず、現在でもその評価は他のアルバムと比べれば、ぐーんと低いものになっている。が、この「ウイスキーに合うアルバム」シリーズでは、一番最初に取り上げたアルバムでもあるのだ。レッド・ツェッペリンのアルバム『聖なる館』(Led Zeppelin"Houses of the Holy"1973)に収録された「デジャ・メイク・ハー」"D'e Ja Make Her"は、「Did you make her ?」を「ジャマイカ?」に聞き間違えたという歌詞であるが、当時、この曲がレゲエで、その音楽がジャマイカ生まれである、なんてことは、ライナーノーツを読むまで判らない、そんな時代であった。とにかく、多くの有名アーティストが手放しで褒めちぎっていたレゲエなる音楽を、まだ吸収力の高かった凍み豆腐の様な脳味噌は、しっかりと出汁を吸い込んでしまったのだ。



ファンの間では、『ライヴ!』("LIVE!"1975)こそが最高のライブ・アルバムだと賞賛する向きもあるが、個人的には僅差でこの『バビロン〜』に軍配が上がる(ただし、曲が被っているのは1曲だけだし、前者も名曲揃いなので、両者共超名盤であることは間違いない)。冒頭、いかにもレゲエといった感の強い、ゆったり目の曲調「ポジティブ・ヴァイブレーション」"Positive Vibration"で幕を開けたと思ったのもつかの間、「パンキー・レゲエ・パーティー」"Punky Reggae Party"〜「エクソダス」"Exodus"で一気にヒートアップする。いいや、待て待て、突っ走るにはまだ早い!「スター・イット・アップ」"Stir It Up"でちょいとペースを落とそう。そう、まだ夜は長いんだから、チビチビと。…やがてグラスは進み、いつの間にやら、アナログ盤で言うところのC面だ。ギターソロが大々的にフューチャーされた「ライヴリー・アップ・ユアセルフ」"Lively Up Yourself"で、ライブもそろそろ佳境に入る。D面でいよいよ「イズ・ディス・ラブ」"Is This Love"に突入する。狂おしいほどのラブソングだが、個人的には一番のお気に入りで、あっという間に過ぎてしまう約7分半が愛おしい。アルバムは「ジャミング」"Jamming"で大団円を迎えるが、何時聴いても、あっという間に終わってしまったという感が強い。が、そうじゃない事は毎回ひどく減ってしまうボトルが証明している。でも、今夜はもう一杯だけ飲もうかな。アルコールは汗と一緒に飛んじゃったから。


バビロン・バイ・バス

バビロン・バイ・バス