高田郁『あきない世傳 金と銀』

高田郁の新シリーズ『あきない世傳 金と銀』(源流篇)とその最新作(早瀬篇)。
前作『あい』は初挑戦となる実在の人物を描いた作品だったが、そのせいかちょっとばかり詰め込み過ぎで、消化不良といった感じだった。しかし、今回は太鼓判を押せるほどの出来、早くも大傑作の予感、なのである。予感、と書いたのは、このシリーズがいかにも長く続きそうな展開だからだ。

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(ネタバレ注意!)時代は江戸・享保。田舎の村で私塾を営む学者の娘として生まれ育った主人公"幸"(さち)は、兄と父を矢継早に失い大坂(大阪)の呉服屋"五十鈴屋"に奉公に出される。そこで番頭の治兵衛に非凡なる才能を見出され、嫁に逃げられた四代目主の後添えになる…といった展開。ここまでが源流編だが、幸はまだ14歳。その後の展開が最新作の早瀬篇となる。以前にも大坂を舞台にした『銀二貫』という作品があったが、これも非常に評価が高く、NHKでドラマ化もされた。そういった下地があればこその本作、という事になるだろう。今後の展開が大いに期待できるが、なにしろ本作が文庫本書下ろしのため、次回は恐らく半年以上先ということになるだろう。とにかく新作が待ち遠しくて仕方がない。