MEINL GENERATION X 10" FILTER CHINA を手に入れた!

個人的な意見を言わせてもらうと、そもそもドラマーってのはドラムを叩く事以外に、ドラムセットという、いわばインダストリアル的な見た目のカッコよさに憑りつかれている人種である。もちろん、金と場所があれば、いくらでもゴテゴテと増やすことは可能だけど、やはり、いかにスタイリッシュにセッティングするかってのが大事で、各パーツを数ミリ単位で調整するのは、何も叩きやすさだけを追及してるからってわけじゃない。見た目のインパクトで、如何に客を威嚇し、驚愕させるかってのが最大の目的なのである。特に自分の様なテクの無いドラマーにとっては意外と効果的。まあ、これを一般的に「はったり」と呼ぶんだけどね😭
基本的には、あまり見たことの無いパーツを設置するのが手っ取り早くて効果的。そこで登場するのが変わり種シンバルってことになる。根がポップス志向なので(いや、お前はハードロックだろとよく言われるが)、タムとかあんまり使わないし、まあ、無くてもいい(笑)。代わりに小径のシンバルを10枚くらい横並びに設置したらカッコイイかなと。まあ、実際はしてないけど。いや、考えてみたらハットも含めて現在7枚の小径シンバルも所有しているのだから、あながち夢ではないな。

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というわけで、本題。今回のブツはMEINL(マイネル)の GENERATION X 10" FILTER CHINA、初MEINLだ。見ての通り、小径のチャイナである。基本的にチャイナタイプはひっくり返してセッティングするのだが、こうすることによって、チャイナ独特の音が出る。しかし、これが小径となると話は違って、そんな音、つまりカーマイン・アピスなんかがよくやる、スティックで刻むあの音は出ないのである。感覚としては、やはりスプラッシュとチャイナの音が混じったような音で、サスティンはそれなりに長いが、まあ、この辺りはフェルトの挟み付け具合でどうにでもなる。よく見ると、小さな穴が12個空いていて、これがサスティンの調整をしているのだと思われる。表面にはプリント塗装かレーザーエッチングかわからんけど、変な文様が描いてあるが、これが音に対しての何らかの効果、つまり音色の調整等の意味があるのかは不明。小径のシンバルは基本的に全部エフェクト系なので、正直、トップの様にリズムを刻むのにはちょっと無理がある。普通にスティックで叩くと、うるさくて話にならない。まあ、ロッドでなんとかなるって所かな。音量はそれなりのバカでかい音は出せるし、うるさいので、エフェクトとしての役割は十分果たせるのは確か。バスドラムレスな現場でも、インパクトは出せるからいいんじゃないかな? 価格は、最安値を探して珍しくAmazonで購入したが、8131円。因みに、このチャイナに3個のジングル(タンバリンに付いてるやつね)が付いたGENERATION X 10" JINGLE FILTER CHINAというのもあるが、価格はほんの数百円しか違わない。YouTubeのメーカーサイトで音比べをした結果、今回はジングルなしのものにした。まあ、シンバル同士を重ねて収納できないから、ってのが一番の理由なんだけどね。

youtu.be

PAiSTe 2002 Accent Cymbal 6" を手に入れた!

なんでも、今年初の記事らしい😅 まあ、忙しいっちゃ忙しいけど、例によって、他のSNSで記事を書いてるので、どうしてもブログがおろそかになってしまうというのが本当のところだ。

さて、去年辺りから、パーカッション関連の小物類がかなり充実してきたので、色々と紹介して行きたいと思うが、まずはシンバルから。
基本的に楽に持ち運べて、しかもインパクトのあるヤツが購入対象なので、どうしても小径のエフェクト系シンバルが多くなってしまうんだが、小径なものは、価格的にもリーズナブルなので、懐にダメージを喰らう事が少ないってのがいい! もちろん、一番安い店で買うのは当たり前で、必然的にサウンドハウスでの買い物が一番多い。ただ、パーカッション、シンバル類は直輸入物も多く、品揃えが常に安定しているという訳ではない。また、いくらサウンドハウスといえども、端っから取り扱っていない物も多かったりするので、そこは老舗楽器店にあるドラムに特化した専門店なんかがやはり強みを発揮する。

f:id:hisonus:20210713142912j:plainそんな中で目についたのがPAiSTe2002のAccent Cymbalというやつ。これはクロサワ楽器で購入したのだが、サイズが4、6、8"の三種類あって、メーカーサイトやYouTube等で音を確認して、最も気に入った6"を購入した。このアクセントシンバルは2枚組で、革製のハンドストラップが付属しているのだが(T字型になっているストラップの両端をホールに無理やりねじ込んで、ぶっといホッチキスで留めて装着しているという酷いもの)、これは、普通のハンドシンバルとしての演奏を想定しての事なんだろうが、もちろん、こちらはスティックによる単体での演奏が目的なので、これを外して使っている。価格は税抜き5,600円だったのだが、正直、バラ売りでもっと安くしてほしかった。まあ、それでも老舗のPAiSTe、しかも、かつて憧れた2002シリーズなんだから、それだけでも十分満足なんだな(笑)。
サウンドの方は↓で確認していただけるが、正直、超高音成分が大半を支配しているので、録音、録画後に確認してみると他の音にかき消される事も多い。従って、これは他のシンバルから遠ざけてセッティングするのが正解で、特にトップシンバルからは離した方が良い。また、アコースティックセットでの演奏は、他の楽器の音量を上回ってしまい、曲によっては、キーが合わないと強烈な違和感を覚えることがあるので、その辺りは事前にチェックしておくことが必要。間違っても、本番でいきなり使ってみる、なんてことは避けた方がいいだろう。

youtu.be

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このシンバルを入手した頃、大久保のスタジオMにて行われた渡辺としのり君の配信ライブにて。見えにくいがシンバルスタンドにAccent Cymbalがセットしてある。

『NIAGARA TRIANGLE Vol.2 40th Anniversary Edition』各製品の全貌が明らかに!

来春発売となる『NIAGARA TRIANGLE Vol.2 40th Anniversary Edition』のVOX、アナログLP、通常盤CDの全貌が、遂に明らかとなった。f:id:hisonus:20211218110247j:plain
VOX、アナログLPについては、発表当初から情報が小出しにされ、既に全ての内容が明らかになっていたのだが、残る通常盤CDの内容も明らかになった。しかし、その内容には首をかしげるばかり。というのも、今までのナイアガラの伝に則れば、超高価なVOXセットを購入すれば、全ての内容がカバーできる、という考え方で、つまり、VOXを買えば、通常盤やアナログ盤は買う必要はないということであった。しかし今回、アナログ盤はVOXセットには含まれていないため、別途購入の必要があるのだ。因みに、ロンバケVOXのアナログ盤LPは重量盤2枚組、45回転であったが、通常アナログ盤は33,1/3回転の1枚ものだった。
そして、更に納得が行かないのが、本編のCDがVOXセットには含まれないという事。これはBlu-ray DiscBlu-ray Audioとして収録されるのだが、Blu-ray Discは基本的にコピー不可なので、本編を楽しむためにはオーディオセットで楽しむしかない。そして、スマホやポータブル・オーディオで外に持ち出すことは出来ないのである。更に悩ましいのは、通常盤CDが2枚組で、そのDisc-2にはかつてニッポン放送で放送された「スピーチ・バルーン 1982」「スピーチ・バルーン 2012」が収録されるのだが、これもまた、VOXセットには収録されない。
怒りのおさらい(笑)。要するに、今回2万円オーバーの高価なVOXセットを購入しても、更にアナログ盤、通常盤CDを別途購入しない限り、コンプリートとはならないということ。今までのVOX…即ちシリア・ポールの『夢で逢えたらVOX』と『A LONG VACATION VOX』は、もちろん不満な点は多々あったが、それでもVOXを持っていればコンプリート出来た(まあ、ロンバケSACD盤が後出し的に発売されたが、あれは新商品的な意味合いが強い)。そういった意味で、今回の商品構成には納得が行かない。特に、本編のCDがVOXに含まれないなど、これはもう、そのうちハイレゾで配信するから、スマホで聴きたければそっちを買えよ、といった伏線であるとしか思えない。
正直言って、40年以上経った作品がまだ金になるのだから、レコード会社としては非常に美味しい商品なのだろうが、もう少しファンに寄り添った商品構成を考えていただきたいものである。

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VOXには、ヘッドフォン・コンサートの一部(笑)が収録される。これもさっさと全編を製品化してもらいたいものである。

Toledoの悪足掻き。

サブ機のCPUはAthlon64X2 4400+(Toledo)(Socket 939)という、今や殆ど価値のないものなんだが、ちょっと調べてみたら、このToledoは2005年に発売されていて、実際に組んだのは2009年の事。実に12年も前に組んだものだが、その時すでに、実力はあるが古くなりかけのCPU、といった印象があったと記憶している。それでも、正直まだもうちょっとは行ける…と思っていた。しかし、7から10に昇格出来ず、結局、(セキュリティ上の問題から)スタンドアローンでネットワークからは外して使っている。ただし、サブ機とはいっても、実際にサブとしてメインに使っているのはノートなので(ややこしい)、こちらはいよいよ出番が少ない状態だ。
さて、このトレド、ネットサーフィン(死語?)したり、動画観たりはサクサクだったのが、最近見かける、4K、8Kの生データなんかはさすがにCPUもメモリも100%振り切ったりすることもあるし、最近のゲームは、ボードゲーム如きでも、もの凄いエフェクト使ってたりして、コマ落ちしたり、カクついたりすることも多い。ただ、Windows7ってのは非常によく出来たOSで、BSoDになることは滅多にない。しかし、さすがに最近は、いとも簡単に落ちたりもするようになって(ただし、原因は切り分けてないのでCPUやメモリのせいじゃない可能性もある)、もう終わりかなと思っていたのだが、DDR400(PC-3200)1Gが、1枚1000円くらいで売っているのを知り、ちょっとだけ悪足掻きしてみようかなと思ったのだ。しかし、到着したメモリは、同じ型番で違うチップが積んであるという酷い有様(もちろん中華製)。これ、デュアルチャネルで動くのん?という一抹の不安もあったが、とりあえず、久しぶりに中身掃除して、メモリ増設ついでに、以前メイン機で使っていたSSDでクローン作ってブート・ドライブにしようかなと目論んだ。

さて、ケースを開けてみると、意外と綺麗。まあ、メイン機にクソ重い作業をやらせない限りは出番がないのだから、当然といったところだろう。クーラー見て思い出したけど、このCPUファンって一度息の根が止まって、オーバーホールして使ってるんだった。確か、中のOリングが破損して、代わりにそこいらにあった同じ径のワッシャーが入ってるはずだが、結構行けるもんだ(笑)。

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掃除が終わったら、とりあえずメモリの換装。今まで付いていたのは1GBx2枚+500MBx2枚の計3GBだが、今回の中華製は、1枚1GBなので、計4GBとなる。
問題は、先に述べた、チップが違うのにデュアルチャネルとして認識するのか?という点。しかし、CPU-Zで調べてみると、あっさりとクリアして、ちゃんとデュアルチャネルで動いていることが確認できた。

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さて、メモリは無事終了したが、ここでもう一仕事。ブート・ドライブとなるSSDのクローン化と換装だ。ド定番の"EaseUS Partition Master"をインスコして作業開始!SSDをフォーマットしていよいよクローン化!と思ったら、ありゃ?ここから先は有料だと!いつからこーなった!そりゃないぜセニョリータ! ネットで調べてみると、今は"Mini Tool Shadow Maker Free"というのが定番らしい。返す刀でこちらをインスコして、作業再開! これは直感的に作業できる優れモノで、サクサクと進んで、あっという間にクローン完成だ! そういやEaseUS Partition Masterは最終的にクローン化されるのは、作業完了後にリブートしてからだったが、これはOS起動のまま一気にクローン化してしまう。
さて、最終的作業として、このSSDの物理的換装。今更だが、この12年で老眼が一気に進み、暗がりでのネジ止め作業っつーものがなかなか辛くなってきた(笑) ネジを何度も落しつつ、ようやく完成! OS起動後に再起動を求められる(良くある話)も、何事もなく無事起動。

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さて、このサブ機、あと何年悪足掻き出来るのだろうか? 正直、そう長くは持つまいとは思うが、とりあえず、もう少し頑張れ、オレのトレド!

大滝詠一『A LONG VACATION』40th Anniversary EditionのSACD盤を聴く

ロンバケ40周年記念VOX発売と同時にアナウンスされていたSACD盤が、先日遂に発売となった。当初は、完全限定生産で1000枚限定ナンバリング仕様と発表されていたが、予約が殺到したため、予約期間内のものには全てナンバリングが入る事となった。発売後に初回プレスが4000枚であることが判明したが(4000番台も存在しているとの情報もあり)、これはシングルレイヤーのSACD盤としては異例の枚数らしい。要するに、それだけ、このSACDという規格が一般にはほとんど普及していないということなんだろう。まあ、この辺り、Blu-rayの普及がイマイチなのと似ている。その理由は、恐らくコピーが不可能(出来てもかなりハードルが高い)というのがひとつの要因だと思う。今どき、音を取り出して外へ持ち出せないメディアなど、正直、オーディオおたく以外には不要なものでしかないのだ。いや、もうひとつ、レコード(CD)コレクターもここに入れておこうかな。そもそも、収録がシングルレイヤーなので、SACD専用機かユニバーサルプレイヤーでなければ再生できないのだが、それでも買うナイアガラーは、少なからずいる…いや、大勢いるはずだ(笑)

 ところで、今回のSACDの前に、VOXのBlu-rayにはハイレゾ音源(96kHz/24bit)が収録されていたが、音にどれほど違いがあるのかも興味のわくところだ。このハイレゾ音源は、ハイレゾのために一からリマスターしているので、元がCDと同一のリマスター音源ではない。そして、今回のSACDも一からの作業である。もちろんこれは、フォーマット上の問題でもある。

発売がアナウンスされてから、情報が小出しにされ、やがて、スリップケース付きでくりぬかれた窓からプールのイラストが覗くといった仕様が明らかになると、いやがおうにも気分は盛り上がる。さらに、A LONG VACATIONの"A"の文字が赤ではなく金で、スリップケース上部が金のラインにSuper Audio CDの文字…う~ん、これはMobile Fidelityを彷彿とさせるデザインじゃないか! ついでの話だが、VOX発売直後に、アナログ盤の再プレスが発表になり、VOXに収録されるから…との理由で購入しなかったLP盤も予約したのだが、これがSACDと同時発売のため、気分は2倍2倍!(古っ!)で盛り上がった。

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さて、ようやく本題。
待望の、大滝初のSACD! である。金色であしらわれたスリップケースを外すと、CD盤とほぼ見分けのつかない本体がお出ましする。違いといえば、帯に上部にある「Super Audio CD」の文字とSACDDSDロゴマーク、そして「Super Audio CD対応プレイヤー専用ディスク」の文字くらいだろう。正直、このまま同じCDコーナーに陳列されていたら、間違う可能性もある。なるほど、スリップケース仕様は必然というべきだな。そしてディスク本体。これまた金色で印刷されて、まばゆいばかりに神々しく輝くディスクだ!
では早速拝聴する。もちろん正座で(笑)

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まずは天然色から。冒頭のチューニングシーン。これ、レココレの連載記事で初めて知ったんだが、この部分、30周年記念盤のオケで聴くと、一旦テープが止まる箇所がある。これは大滝が、今から演奏始めるよ、って合図を出さない人なので、演奏が始まりそうな気配を感じたら、エンジニアの判断で録音ボタンを押すらしい。つまり、この部分は、始まると思って押したけど始まらなかったので止めた、という事なんだな。この話を知ってからというもの、この冒頭部分でのエンジニア側の緊張が伝わってくる気がして、もう今まで通りには聴けなくなってしまった!
で、ピアノの音。やっぱりこれで決まる!、んだが、…えーと、後ろで鳴ってるボンゴ。この音色が明らかに違う! もちろん、ピアノも違うんだけど、このボンゴの違いが顕著で、鳥肌が立つ!って、もうかよ(笑)。更に、演奏が始まると、このボンゴの音が凄くよく耳に届く。恐らく、歴代の各メディア史上トップだろう。つまり、それだけ音の分離が良く、各楽器のディテールがはっきりわかるという事だ。そして、信じられないくらい、音場が広がっている。『大滝詠一A LONG VACATION読本』を読むと、マスターを担当した内藤哲也氏が、SACDは音場が広がり過ぎる傾向にある、と語っていたが、それを考慮した上でのリマスターでも、なお広がっているのだ。逆に、音が洪水の様に押し寄せるっていう、迫り来るような感覚もナイアガラサウンドでは極めて重要なことなんだが、こちらはやや大人し目。だが、この音の広がりにはちょっと抗えないな。Voは今までのCDでは、ややヒステリックに感じる部分もあったが、SACDではやはり音に丸みがある分安定感がある。この丸みというのはあくまでも自然に聴こえる音、と捉えて欲しい。各種SE音も取って付けた感がなく、例の”ド~ン”も腹に響く。
続く「Velvet Motel」。出だしのギターがやや大人しく聴こえるが、歌が入るとガラリと雰囲気が変わる。大滝の細かなブレスコントロールがはっきりと聴き取れる。最大の聴きどころであるラジと一文字ずつ交互に歌う「ふ・う・け・い・が・ひ・と・つ」の部分。ややハスキー気味の彼女の声に、耳元が思わずぞくっと来る。
テンポも曲調も似た「カナリア諸島にて」も、出だしが繊細で、CDの様ないきなり感がない。やはり大滝の声が素晴らしく、コーラスの分離と溶け込み具合が信じられないほどのバランスの良さで、はて、ここは天国か?と頭を振ってみることしきり。
アナログではB面の1曲目となる「雨のウェンズデイ」。Voの笑っちゃうくらい難解な譜割りが特徴的だが、オーディオ的に最も難しいのは、うおおお~だけで進行して行くパートだ。実はここ、ディレイが掛かっていて、Voはかなり低い部分まで潜って行くのだが、SACDだと他の音に埋もれることなく、この辺りのディテールを難なく聴かせてしまう。まるで音の雨の中で歌っているようじゃないか!
「恋するカレン」は、このアルバムに収められた他のスロー系の曲とは明らかに異なるリバーブ感。Voと楽器が溶け込んで、一体化したような音の壁となって迫って来る感覚がある。歌詞の内容が悲痛な分、哀しみの中にどっぷりと浸かってしまう。なんでも、コーラスを稼ぐために24chを2台シンクロさせて録音しているらしいが、途中、女性コーラスで埋め尽くされる辺りは圧巻!
「FUN×4」。他の曲と比較して、明らかにリバーブ成分が少ないので、至極真っ当な音に聴こえるので、逆に何かほっとする。一番驚いたのは、月に吠える男の声。よく聴くと、喉がコロコロと鳴っているのだが、SACDだと驚異的な再現力で、CDとは段違いのコロコロ具合。いや~、五十嵐浩晃って実はスゲーんだなと思った次第。
最後は「さらばシベリア鉄道」。ピアノはアプライトで、ハンマーに画鋲を打ち込んで演奏しているのだが、これがもう凄い音!CDだと単にヒステリックなアプライトにしか聞こえなかったが、SACDでは、これはもう凶悪な武器を身に纏ったアプライトだ(笑)。ピアニストが(指がつるので)嫌がるのもうなづける(因みに、このロンバケセッションでは、逃げ出したミュージシャンが何人かいるそうだ)。

さて、いろいろと駆け足で紹介して来たが、あらためて感じたのは、今回のSACDはとにかく次元が違うという事。もちろんSACDだからといって、全てのアルバムがCDよりもダントツに優れているとは思わない。特にリイシューでは、そもそもの録音状態だったり、保存状態であったり、様々な要因に左右されるからだ。現実的には、このロンバケもオリジナルのマスターテープは(存在はしているだろうが)既に使い物にはならない状態。従って、このアルバムに使用されたマスターが既にコピー(コピーマスター。全8種が存在している)であるのだ。そして、この、ないものに対して、今後新しい何かを追及して行くことはほどんど限界だと感じる。つまり、それくらいこのSACDは究極であるのだ。冒頭でも触れたが、実際にSACDの再生機器を持っていないという方も多いだろう。しかし、それは、本当に宝の持ち腐れである。このアルバムは、頭のまわりだけで完結する様には作られてはいないのだ。確かに、大滝は、ハイレゾSACDの製品化には前向きではあったが、それを一時的に保留していた。だからこのSACD化は、故人にとっては不本意だとの意見もある。そして、その意見に反対するつもりはない。だが、それでも、とにかく聴いてみてくれと言いたい。そこには、あなたの知らないロンバケがあるのだから。

PRISM『SECOND THOUGHTS / SECOND MOVE』(SACD)を買ったわけ。

このアルバムが出た1978年当時ってのは、音楽的ブームとして、まず、フュージョン/クロスオーバーがあった。その前の76~77年ってのが凄い年で、キッス、クィーン、エアロスミスの御三家の人気が爆発した一方、ベイ・シティ・ローラーズの人気が女子の間で大爆発! しかも第二次ビートルズブームの到来があり、そこへパンク勢が割り込んできた感じ。しかし、日本でのパンクムーブメントってのはあまり印象になくて、つまり、ロンドンパンクでもNYパンクでもなく、何故か西海岸の陽気な女の子グループ、ランナウェイズの人気が沸騰していたのだ。でもね、まあ、可愛かったのよ、Voのシェリー・カーリーが。ベビーフェイスにプラチナブロンドで下着姿、これ人気が出ない方がおかしい(笑)。

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さて、そんな中で、『ギター殺人者の凱旋』で人気を博していたジェフ・ベックが『ワイアード』を発表するや否や、超大ヒットを飛ばすんだけど、これで音楽界の流れがガラッと変わった感があった。ジャズ界からは、チック・コリア率いるリターン・トゥ・フォーエヴァーが完全にエレクトリック化して、更に、メンバーのスタンリー・クラークジェフ・ベックと合流して来日と、正にフージョン人気ここに極まれりといった感があった。
そして、日本に於いてこのブームをけん引していたのがプリズムであった。和田アキラ森園勝敏といった超絶技巧派のギタリストを筆頭に、渡辺建、伊藤弘毅、鈴木リカ徹といった凄腕プレイヤーを擁した大人気バンドで、チケットは即完だった。金もコネも無いバンド少年達は、学園祭のライブへ足を運ぶ事でしか、お目に掛かる方法がなかった。
…それは、まさに青天の霹靂であった。友人の女の子が、父親の仕事の関係で、プリズムのチケットがタダで手に入ったのだという。しかも5人分!! これはね、もう一生の運を使い果たしたくらいの行幸!まさに至福!だったわけです。ただ、このコンサートはイベント的なもので、実はコルグが新製品の発表に併せて企画したものだった。最初はシンセの紹介から始まって、後半がライブだったと記憶している。ただし、会場は新橋のヤクルトホールだったので、やっつけという感じはまったくなく、フルではなかったものの、その演奏を十分堪能することが出来た。しかしこのイベント、ここで終わりじゃなかった。なんと、ライブの終了後に抽選会があって、景品はコルグ製品やプリズムのグッズだった。しかも、これ、新製品の発表イベントだったから、やたらと当選確率が甘い! 結果、友人はコルグの小型電子チューナー(今時のサイズからすればデカイ(笑))をゲット。自分は最新アルバムである『SECOND THOUGHTS / SECOND MOVE』が当選し(記憶では)伊藤弘毅から手渡された。あとは、コルグのステッカーなんかも貰ったような気もする。とまあ、これは、なんとも楽しい青春時代の思い出だ。
ところがこのフュージョンブーム、YMO、新生RCサクセション等の人気が沸騰し、続くテクノ御三家、プラスチックスヒカシューP-MODELの台頭などで、それこそ「あっ!」という間に人気が凋落してしまう。当時は、感性こそが最重要で、演奏テクニックなんてのは二の次っていう風潮がまかり通っていたので、それこそフュージョンプログレバンドなんてのは完全に行き場を失っていた。
そんな中、自分に訪れたのが貧乏ブーム、いや、これはずーっと訪れてるけど(笑)、本当に困窮していた頃、金になるものがひとつだけ手元にあった。そう、レコードだ!
チョイスしたのはビートルズやディープ・パープルのブート盤数枚。いや、さすがに正規盤は売らなかったね。そして、邦楽が数枚。その中の一枚が、この『SECOND THOUGHTS / SECOND MOVE』であった。買取金額は忘れたが、なんだかんだでビートルズのブートがほとんど原価(つまり価値が上がっていた)で引き取り。他のブートもそこそこ、そして邦楽は…まあこんなもんかの金額。でもね、この、レコードを売る、という行為、まあ、人それぞれの価値観や事情にもよるんだろうけど、しばらくして大後悔したんですよ。つまりマテリアルとしてのそれを売ってしまったという事よりも、それに付随する思い出も一緒に消えてしまった気がしたわけです。つまり、本当ならレコード盤に針を落とし、ジャケットを眺めながら、かつて観たヤクルトホールでのコンサートを思い浮かべながら曲を堪能できたはず。それがもう叶わない…、この現実を思い知らされたわけです。少なくともこの『SECOND THOUGHTS / SECOND MOVE』においては、同じものを買い直したとしても、それはやはり、違うもの、という気持ちが強かった。
この出来事は生涯の教訓として刻まれ、以降、レコード、CDだけは売ってはならないという掟が出来上がったわけです。そして、最近になって更に思い知らされたのは、これらのライブラリーってのがいつ必要になるかわからないってこと。実はバンドのメンバーに、とあるアーティストのアルバムを紹介したんだけど、それは、自分ですら、もう何年も手にすることのなかったアルバムだったんだが、それを機に、自分の中でもブームが再燃して、最近のアルバムや、未入手だったアルバムを遡って買ったりと、まあ、人生、どこでどうなるのか判らんものだと思った次第。

さて、本題。
PRISM『SECOND THOUGHTS / SECOND MOVE』。今回購入したのは、2003年という古いリイシュー盤の方で、ハイブリッドのSACD盤だ。現在いくつかの再発盤が存在しているが、どの盤にも同じボーナストラックが収録されている。そのうちの2曲はライブで、その時不参加だった鈴木リカの代役として村上ポンタ秀一がドラムを担当している。
和田アキラの訃報を受け、まず思い浮かんだのがこのアルバムと、それを売ってしまった苦い思い出だった。そしてこのCDの購入を検討していた時に、追い打ちをかけるように飛び込んできた、ポンタの訃報。何やら因縁めいているが、とにかくこのアルバムを再び聴くきっかけになったわけだ。
数十年ぶりに聴くアルバムは、全く色褪せることなく、思い出が脳内いっぱいに広がる。メロディーやフレーズのひとつひとつが、いとも簡単に蘇ってくる。あれ、これってこんなに聴き込んでたんだ!と自分でも驚愕するほど。
随分と長い時間がかかったけど、ようやく会えたんだな。

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